参考書をぶったぎってでも、過去問をやらせることがある理由。本当は心が痛いのだけど。

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 教育は二つの相反することを同時にやらなければならない難しい営みだ。

 一つは、相手をやる気にさせるために、出来る実感を与え続けなければならない。
 もう一つは、相手を継続して勉強させるために、まだまだ目指す場所まではほど遠いことを実感させつづけなければならない。

 基本的に、学力の向上率は、やる気×継続性に依存する。別の言葉にすると、気合い×根性である。

 このどちらかがある人は多いが、両方を兼ね備えている人はなかなかいない。これがむずかしいところだ。
 
 そこで、参考書の演習が基礎力の養成から、入試実践力の養成に入った時、あえて私はこの流れをぶった切って、滑り止め校も含めた過去問を八月ぐらいにやらせるようにしている。ここから調子のいい子は、すべて過去問での演習に変えることもある。

 だから、教員・生徒一同二週間から三週間ぐらい参考書は基礎の文法問題集と速読英単語、あとはチャート式のみやってもらって、過去問に取り組んでもらう。正解率が悪くても良い。とにかく、何が出るかをしっかり把握することで、これからの対策を一緒に考えることができるようになるし、こちらのやり方を信じて邁進してもらえるようになる。

 この「信じてやりきる」というのが受験では特に大切だ。特に後者がものすごく大切だ。

 その上で、五〜六割の正答率を誇る過去問を見つけ出して、その大学の入試問題レベルと同じぐらいの参考書をやってもらって、それを正答率九割まで引き上げる。

 うちの塾で、私が担当している生徒だと、大体今の時期だと、三人は青学や中央の問題ならこれぐらい取れるみたいだ。進んでいる子一人は慶應でもこれぐらいは取れる。もう一人はちょっとまだもっと前の基礎固めだ。

 たとえば、速読英単語の入門・必修、えいひん、チャート式、やっておきたいの300,500なんかはこのあたりに属する。やりかたは、一周目を二週間、二周目を一週間、三週目をその半分とやって、一日で復習できるまで仕上げることだ。(暗記系に顕著。長文読解の問題集みたいなのはまた違うけど、数学なんかはこういうやり方が忘却曲線的には理想。)

 そして、次は志望校と同じぐらいの難しさの問題集をやって、同じ要領で六割の正答率を八割ぐらいまで上げるのだ。そうすると合格点がとれるようになっている。いきなり志望校と同じぐらいの難しさの問題をやりたがる子が多いけれど、それではいけない。基礎固めがあってこそ、まずは志望校と同じぐらいの難しさの問題集で六割の正答率が得られるというスタートラインに立てる。たとえば、上級編、リンガメタリカ、アカデミック、ファイナル文法問題集、プラチカ、やっておきたい700,1000なんかはこれに属する。

 ただ、これが本当に心が痛むんだ。

 いままで、中学校から不登校だったり、高校を中退したり、まじめに授業をうけていなかったり、そんなところからどうにか這い上がってきてくれた生徒さんたちを、苦肉の思いで、谷底に突き落とす。このあたりが解約率も一気に増えて、生徒の四分の一から半分ぐらいはやめる。ようは気力が続かなくなるのだ。志望校が早稲田からマーチぐらいになり、塾にこなくなり、そしてやめていく。そんな人もいる。悲しいことだ。

 一方で、自分がある程度慶應の問題にも食らいつくことが出来た(大体六割五分ぐらいだけど)ことを自信にして、さらに飛躍しようと勉強への取り組み方が変わる生徒もいる。

 でも、ここで谷底に突き落とす必要がある。気力が続かない人を淘汰して、やる気がある教え子を九月から新たに大量に入れて、それで競争させる必要がある。

 もし、最初はやる気だったのだけど、だらだらと惰性で勉強して、それで十二月ぐらいに、過去問を解いてみて、点数が足りないという現実に気づいてももう遅い。そのときはもうどうしようもない。ただ、八月の半ばまでだったら、まだ弱い部分を分野別参考書で補強することもできる。どうにかすることができるのだ。

 勉強をするにあたって、ずっと直線上に成績が上がることはありえない。ふつうは、伸びて落ちて、伸びて落ちての繰り返しで、まじめにやっている時は成績が落ちているように思えるのがむしろ普通だ。だからこそ、日々の小テストで自信を養うことが大事になってくる。速読英単語、えいひん、チャートこのあたりで確かな成長への実感をつかむ他無いのだ。